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今回は、翻訳について以前にtwitterでつぶやいたことのある小ネタを集めてみました。少し説明を補足していますが、あくまで小ネタですのでさらっといきたいと思います。必ずしも対訳形式ではないので、経験されたことのある方なら「ああ、あれのことね」とピンとくるものもあるでしょうし、そうでない方には「ん?なんのこと?」と思われるものもあるかもしれません。いつかどこかで何かのヒントになればうれしいです。

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「A, B, and C were the early (first) adopters of」を「他社に先駆けて~を採用したのは、A、B、Cです」とすっきり処理されているのが気持ちいいなぁ

《補足》私が担当する分野では「early adopter」は比較的よく出てくる用語で、「初期(早期)採用者」とか「初期(早期)導入者」とか「アーリーアダプター」なんて訳されているのを見ますし、もちろん文脈によってそのように訳すことも多いのですが、だからといって全部が全部そうすればいいというものでもありません。これはこの用語に限ったことではなく、ほかのどの頻出用語にもいえます。たとえば、IT分野で「application」は頻出用語ですが、いつもいつも「アプリケーション」と訳していいかというと違います。文脈によっては「応用」や「用途」、その他の表現を選択すべき場合もあるわけです。決まった訳語を機械的に当てはめていると、いつか足をすくわれることがあるかもしれません。


「そこで、~が重要になります」とするのと、「そこで重要になるのが、~です」とするのではインパクトが違いますね。

《補足》 これは、どちらかが正しいというものではありません。その文脈においてどちらがより効果的な表現かというお話です。「It is important to~」をいつも「~することが重要になります」と訳していませんか?


「a part of ~」を「~の一部」として不自然だと感じたら、たとえば、取り組みなら「一環」、チームなら「一員」や「一翼」、集合体なら「要素」、あるいはその状況を「~に含まれて」、「~で利用されて」、「~に組み込まれて」などと言い換えてみるといいかもしれません。

《補足》反射的に「~の一部」とせず、個々の文脈に合った日本語として自然な表現を柔軟に判断したいですね。


「プロのような」→「プロ並みの」

《補足》誤訳ではないけれど、少し表現を工夫することでいわゆる「こなれた」訳になることも多いように思います。


長所を伝える場合、「多く(多数)の」とするより「多彩な」とするほうが文字通り文章に彩りを添えることができますね。

《補足》長所を伝えるときは華やかな表現を使うと、文章がぐっと魅力的になりますよね。


「その結果得られるデータは」とするより、「こうして得られたデータは」とすることで、読者がより自然に作業の流れを感じられるように思います。

《補足》おそらく原文では「the resulting data」だったのだろうと想像しますが、直前の文章を受けての「resulting」の場合、わざわざ「結果として得られる」というような説明調にしなくても十分伝わると思いますし、読者の思考の流れを妨げないのではないでしょうか。


原文(英語)では「〇〇を××する必要があります。〇〇を××するには~」という表現がけっこうありますが、訳文(日本語)では、「〇〇を××する必要があります。そのためには~」と後半を省略したほうがすっきりして、読みやすくなることも多いですね。

《補足》原文のこの形、よく見かけるように思います。前述のとおり、読者の思考の流れを妨げないことが大切だと思いますので、原文では繰り返しのくどい表現になっていても、訳文では代名詞などを使って簡潔に表すほうがいい場合もあるでしょう。これで訳抜けだと指摘されることはまずないと思いますが、万一指摘されたとしても自分がきっちりとその理由を説明できるようにしておけば問題ないと思います。

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長くなりそうなので、今回はここまでにします。

訳抜けの指摘を心配して逐語訳を意識しすぎてしまうと、そこにばかり集中して、日本語でまわりくどい表現になってしまうことや、普段そんな言い方しないよね、という表現になってしまいがちです。著者が伝えたいことを「読者の思考の流れを妨げない」方法で表現することに意識を向けるだけでも訳文が変わってくるように思います。翻訳のテクニックを学ぶことも大切ですが、結局は文字を介したコミュニケーションなので、「自分がこの文章の著者なら読者にどんな語順で、どんなことばを使って趣旨を説明するかな?」と考えながら訳すこと、裏を返せば、「こんな言い方、普通するかな?」という目で自分の訳文を見直すこと、これを心がけるだけで「日本語として不自然な訳文」から「自然な(こなれた)訳文」に近づけるのではないでしょうか。上記の例がそんな意識の転換に役立てば幸いです。