めぐりめぐらせ ~ある翻訳者の関心事~

在宅翻訳歴9年目の「めぐり」と申します。分野は「IT/ビジネス」、言語は「英→日」です。 twitter: @meguri_megurase

カテゴリ: 翻訳

P5290197

あれはまだ、在宅翻訳を初めて間もない(1年経ったか経たないかの)頃だったと記憶している。
古代ギリシャに関する案件だ。

ここで、IT翻訳の内容をご存知ない方は、「IT翻訳なのに古代ギリシャ?」と思われるかもしれないが、少なくとも私が取引している翻訳会社では、「Webサイトに掲載されるもの」あるいは「クライアントがIT企業」であれば何でも「IT翻訳」に分類される傾向がある(そういうワケでもないのに、IT翻訳にまわってくるものもちらほら...)。つまり、「IT翻訳」の内容はなにも「IT」に限られていないということだ(これがけっこうクセモノだし、オモシロイところでもある)。

話を元に戻すと、その案件は短納期かつ複数のファイル(ストーリー)に分かれていて、そこそこ大規模なものだったので、数人の翻訳者で分担することになった(このときメモリは共有していなかった)。

そして、客先指定の用語集が配られた。おそらく、過去から蓄積したものだったのだろう。
その中に「temple」も登録されていた。私なんかは、訳語として真っ先に中学で習った「お寺」が浮かぶ。案の定、用語集の訳語も「寺院」だった。

さて、問題はここから。この案件の文中にも「temple」が出てきたからだ。「古代ギリシャで寺院?」そう思った私は、「temple」を辞書で引いてみた。訳語の1つに「神殿」とあった。それを見て「ああ、なるほど」と思った(恥ずかしながら、それまで「temple」に西洋の「神殿」という意味があることを知らなかった)。

その後、固有名詞としても出てきたので(「the Parthenon temple」など)、この単語に関しては用語集を無視して問題ないなと自然に判断した(もちろん、固有名詞として出てくる場合は特に、一つひとつ裏を取っていったが...)。

しかし、私はこのとき、作業を分担した他の翻訳者さんたちのチェックも任されていた(短納期案件なので、もちろんチェックにも時間はかけられない)。
なんと、そのうちの1人が「temple」の訳語に用語集の「寺院」を使ってしまっていた。もちろん、「寺院」を「神殿」に一括置換すれば(結果的に)問題はなかったが、そういう場合、他にもあやしい訳語や訳文のオンパレードである。チェックの仕事を受けたことをものすごく後悔した。

その前にもチェックを頼まれて痛い目にあったことは何度かあったが、これも私が現在チェッカーの仕事を受けていない大きな理由の1つになったと思う。

そんなわけで、客先指定の用語集は鵜呑みにしてはいけない。この場合も、おそらく過去案件では「寺院」でよかったのだろう。

特に、翻訳者になりたての頃は、「この用語集を使ってください」と翻訳会社から指定されれば、まじめにそれに従おうとする気持ちはとてもよくわかるが、用語集の訳語を採用してもいいかどうかは必ず辞書やネットで裏を取らなければいけない。同じ客先でも製品やサービスが違えば、同じ単語で訳語が違うこともままあるくらいなので。

□■□■□■□■□

これは極端な例ですが、私自身、訳語選択ではいつも悩みます。
私も今まで自分が気付けなかっただけで、間違った(不自然な)訳語を選択してしまったこともあったでしょう。
辞書やネットで調べることは当然として、日頃から本や記事を意識して読むなど、自分の訳文を客観視して不自然さに気付けるようにしておくことが大切ですね(自戒を込めて)。

IMG_1170

人名の表記については、クライアントによって「英ママで」というところもあれば、「初出時には日(英)の併記で」というところもありますが、後者がなかなか悩ましい...。

特に時間のないニュースリリースの場合なんかは、「あ~、時間がないのにぃ!」と思いながらも最善を尽くして調べるほかありません。

常に英語の名前なら、カタカナ表記も当たりを付けることができるのですが、時にはロシア語、中国語、スペイン語、はたまたどこの名前かすら検討もつかないものもあります。どうにもならないときは英ママにして申し送りしますが、調べた時間がもったいない(そのぶん推敲に使いたかった)...。(´;ω;`)

あれ、どうにかならないかなぁ...(一度、翻訳会社に伝えたことがあります。一応、「検討します」ってことでしたが、クライアントの希望であればどうすることもできないのでしょうか...)。

このページのトップヘ